海洋環境と気候変動は切っても切れない関係にあります。大気中の二酸化炭素濃度が高くなると海中でも蓄積されていきます。データから、二酸化炭素の年間排出量の最大30%が海に吸収された結果、海のpH値が低下する、いわゆる「海洋酸性化」という現象が起きていることがわかります。このまま放置すれば、海洋生態系、沿岸産業、人間のコミュニティや生活にも甚大な影響を与えることになります。つまり、生態系と経済の両方に影響が及ぶことになるのです。

Ocean acidification

日にち:
2023年2月2日(木)

時間:
午後2 時~ 5 時(日本時間)

ハイブリッドイベント
対面(日本東京)
バーチャル

海洋酸性化とは何か、その最悪の影響を避けるために何ができるのか、そして日本や世界の存亡の危機に対応するため、政府、ビジネスリーダー、科学者がどのように協力すればよいか、共に探っていきます。

アジェンダ

2 – 2:15 pm JST
開会の言葉 | 歓迎の挨拶

2:15 – 2:30 pm JST
ドキュメンタリー映像上映 (15分)| 忍び寄る脅威

大気中に排出された二酸化炭素が海水の化学的性質を変え、海洋が酸性化し、海洋生物や人間の生活を脅かしています。気候変動の「邪悪な双子」と呼ばれる海洋酸性化にどれほどの危機感を持つべきでしょうか?

2:35 – 3:30 pm JST
パネル:pH 7: 海洋の脱酸性化

海洋は、二酸化炭素の年間排出量を最大30%吸収しており、気候変動の影響緩和に役立つ一方で、海洋のpH値を低下させる結果を招いています。国連経済社会局のデータによると、過去20〜30年間に海洋酸性化は加速しており、その加速度は更に高まると予想されます。ドイツの研究ネットワーク「BIOACID」によると、北極では低温であるがために最悪の事態が懸念されてます。つまり海洋酸性化は、貝類などの殻の溶解やサンゴの劣化など海洋生態系を破壊し、ひいては海洋生態系に依存する人間社会にとって大きな脅威となるのです。

国連の持続可能な開発目標14の目標14.3は、「あらゆるレベルでの科学的協力を通じて海洋酸性化の影響を最小化し、対処する」ことを求めています。科学界がメディア、教育システム、政策立案者、市民社会と連携して、この問題への関心を高め、技術的な解決策や法制定を打ち出していくことが急務となっています。

この専門家によるパネルディスカッションでは、海洋酸性化の現状について議論し、海洋生態系や海に依存する陸のコミュニティにとっての危機的状況をあぶり出します。そして、この問題をグローバル・アジェンダとして前面に押し出す際に直面する課題について取り組みます。

3:30 – 3:50 pm JST
ブレイク(20分)

3:50 – 4:50 pm JST
パネル:代替案 日本の海岸線における海洋酸性化の抑制

日本の社会経済活動は日本列島を取り囲む健全な海と海洋生態系を拠り所としており、漁業や養殖業は日本経済に大きく貢献しています。しかし、海洋酸性化がこうした産業に深刻な脅威をもたらしているのです。

米国の科学・規制機関「米国海洋大気庁(NOAA)」の調査によると海洋酸性化は今世紀末までに150%進行するとされています。国際海洋保護団体オセアナの10年に渡る調査では、日本を他の先進国と並んで海洋酸性化に最も脆弱な国としています。その悪影響はすでに現れ始めており、2020年から(日本財団により)宮城県、岡山県、広島県の3カ所で行われた沿岸域調査では、牡蠣に影響が出るほどの海洋酸性化の数値上昇が確認されています。

この問題解消には、官・民・市民社会の連携が必要です。日本の海洋政策はどのようにこの問題に取り組めばよいのでしょうか?欧米諸国からヒントを得ながら法律のギャップを埋め、より強固なものにするにはどうすればいいのでしょうか?日本はどのような国から学ぶことができるのでしょうか?日本の革新的な世界をリードする技術力を、政府はどのように適切に活用できるのでしょうか?日本の海岸線の酸性化抑制対策のために、研究開発を推進するにはどうしたらよいのでしょうか?

この専門家によるパネルディスカッションでは、日本における海洋酸性化の問題を深く掘り下げ、海洋保全と持続可能な未来の創造に貢献するための実践可能な知見の提供と政策提言を行います。

4:50 – 5:10 pm JST
質疑応答

5:10 – 5:20 pm JST
閉会の挨拶, イベント終了

登壇者

Steve Widdicombe

スティーブ・ウィディコム
プリマス海洋研究所 科学部長

海洋生態学者。30年以上にわたり野外観察や大規模実験などを通して底生生物学、生物多様性、生態系機能などの問題に取り組む。研究者としてのキャリアは、海洋生物多様性と群集構造に対する自然撹乱(生物撹乱)の影響に関する研究から始まり、現在も継続してこのテーマの研究を続けている。最近は研究の幅をさらに広げ、気候変動、海洋酸性化、人工光など人為的ストレス要因が海洋生物と生態系に与える影響について研究する。また、海洋環境のモニタリングや観測にも積極的に取り組んでおり、世界海洋酸性化観測ネットワーク(GOA-ON)実行委員会の共同議長を務めている。その他、「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」で承認されたプログラム「持続可能な海洋酸性化研究(OARS)」の共同リーダーや、(UNFCCC COPや国連海洋会議の対話といった)ハイレベルな政策議論にも定期的に参加。プリマス海洋研究所において10年にわたり海洋生態学および生物多様性担当部長を務めた後、2019年に現職の科学部長に就任。

Peter Thomson

ピーター・トムソン
国連事務総長特使(海洋担当)

2017年から国連事務総長特使(海洋担当)を務め、国連の持続可能な開発目標14「海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」の推進役を担う。2016〜17年の任期で国連総会の議長に選出。フィジーの国連常駐代表を務めた2010年から2016年には、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の執行委員会の会長を務めた。また、2013年には133の途上国から成る国連最大の交渉グループ「77カ国グループと中国」の議長国フィジーの外交官チームを率いた。2011年には国際海底機構の総会議長に、2015年には同評議会の議長に選出された。フレンズ・オブ・オーシャン・アクション創設時の共同議長で、持続可能な海洋経済のためのハイレベルパネルの賛助会員。

Malaika Vaz

マライカ・ヴァズ
ナショナル・ジオグラフィックの探検家、Untamed Planetの創立者

インド出身。ナショナルジオグラフィックの探検家のほか、テレビの司会や映像制作も手掛ける。2017年にはニューヨークを拠点とする制作会社 Untamed Planetを設立。ナショナル・ジオグラフィック、アルジャジーラ、ディスカバリー・チャンネル、BBCなどのメディアネットワーク向けドキュメンタリーやテレビのシリーズ番組を監督、制作、司会し、数々の賞を受賞。最近は、違法取引シンジケート、絶滅危惧種の保護、地球上の辺境における人間と野生動物の接点などを記録した映像がある。映像が実際に草の根レベルや政策レベルに影響を与えられるよう熱心に取り組んでおり、世界の自然保護団体と連携して活動内容を伝えている。

Yohei Sasakawa

笹川陽平
日本財団会長

20年にわたるビジネス界での経験を経て、1981年に日本財団に入会。その起業家精神から政・官・学・民の各界を引き合わせて、人類が直面する最も差し迫った問題に取り組む。海洋環境保全に対する長年の懸念から、複数の人材育成事業を立ち上げ、1,600名以上の海洋専門家を輩出した。またミクロネシア3カ国における海上保安強化、持続可能で公平な海洋ガバナンスの実現を探るグローバルな研究者ネットワークの構築など、設立したプログラムは多岐に渡る。

Masahiko Fujii

藤井賢彦
北海道大学大学院地球環境科学研究院 准教授

北海道大学大学院地球環境科学研究院の准教授で、教育と研究活動の中心は海洋生態系の持続可能な利用と気候変動が海洋生態系に及ぼす影響の緩和、特に社会における再生可能エネルギーの強化である。また、海洋の温暖化、酸性化、脱酸素化に対するサンゴや海藻などの沿岸生態系の将来予測にも取り組む。更に、日本の亜寒帯沿岸域における生物地球化学的特性の長期モニタリングにも注力している。最近は、マングローブ、サンゴ礁、海藻の育成を通じた沿岸域の生態系に基づく災害リスク軽減(Eco-DRR)にも関心を寄せている。

Tomoyuki Yamamoto

山本智之
科学ジャーナリスト ・ 朝日新聞

1966年、東京都生まれ。南極海での潜水取材、南米ガラパゴス諸島のルポなど、「海洋」をテーマに取材を続けている。朝日新聞社科学医療部次長、朝日学生新聞社編集委員などを歴任。海の生物や環境をテーマに講演活動にも取り組む。著書の最新刊は『温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系』(講談社ブルーバックス)。

Tsuneo Ono

小埜恒夫
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所海洋環境部 主幹研究員

水産研究・教育機構の水産資源研究所海洋環境部主幹研究員のほか、北太平洋海洋科学機関(PICES)の炭素・気候部門の共同議長も務める。地球環境フロンティア研究センターでは科学研究員として勤務経験あり。

北海道大学水産学部で博士号(水産学)を取得。研究領域は、物理・化学的な海洋環境の時間的変動:海洋環境変化に対する海洋低次栄養生態系の反応:沿岸域を含む北太平洋の炭素・栄養塩循環である。

Keiji Washio

鷲尾圭司
水産大学校元理事長、日本伝統食品研究会会長

2014年より日本伝統食品研究会の会長。2022年には里海づくり研究会議副理事長にも就任。京都大学大学院農学研究科で水産学を学び、各地の漁村を回った後、明石市の林崎漁業協同組合に勤務(1983~2000年)。京都精華大学環境社会学部教授(2000-09年)、(独)水産大学校理事長(2009-20年)、内閣府総合海洋政策本部参与(2014~20)などを歴任。著書に『明石海峡魚景色』(長征社、1989年)、『ぎょぎょ図鑑』(朝日新聞社、1993年)などがある。

Lord Paul Deighton

ポール・デイトン卿
エコノミスト・グループ 会長

2018年2月にエコノミスト・グループ執行取締役、2018年7月に会長に就任。このほか、ヒースロー空港と英Hakluyt & Co.の会長や米Square, Inc.の取締役も務める。国際陸上競技連盟の監査・財務委員会の委員長でもある。ゴールドマン・サックスのパートナー、ロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員会の最高責任者、ラグビーワールドカップ2015組織委員会の役員なども歴任。英国財務省では商務担当政務官を務めた。

モデレーター

Charles Goddard

(司会)チャールズ・ゴダード
エコノミスト・インパクト アジア太平洋地域 エディトリアル・ディレクター

エコノミスト・グループの旗艦イニシアティブを構想、構築し、今日の重要課題の解決を促す。パートナーと緊密に連携しながら高齢化、長寿から海洋環境まで幅広いテーマに取り組み、特にヘルスケアや人新世、ブルーエコノミーに力を入れている。香港を拠点とし、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット・アジアの編集ディレクター、上級管理職向けピアネットワークであるエコノミスト・コーポレート・ネットワークのマネージング・ディレクターなどを歴任。現在は、エコノミスト・グループのワールド・オーシャン・イニシアティブでエグゼクティブ・ディレクターを務める。

Naka Kondo

近藤奈香 (モデレーター)
エコノミスト・インパクト東京 政策・インサイト部門マネジャー

エコノミスト・インパクト東京の政策・インサイト部門のマネジャー。Back to Blueでは編集長を務めるほか、企業や財団、政府向けて現実にインパクトをもたらすためにエビデンスに基づく分析や適切な知見を模索する調査プログラムを実施している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)において理学士、東京大学において学士を取得している。

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