プラスチック除去の最前線-マイクロプラスチックからマクロプラスチックに至るプラスチックごみ

プラスチックによる汚染は今日の最も深刻な環境問題の一つだ。プラスチック粒子はエベレストの山頂からマリアナ海溝の最深部まで世界中に既に広がっており、人体や生態系への悪影響が危惧されるプラスチック汚染の根絶を目指して、国連条約制定に向けた取り組みも進められている。

増加する世界のプラスチック生産量

世界のプラスチック生産量は、1950年の200万トンから2017年の3億4,800万トンと増加し、2040年までにさらに倍増すると予測されている。そして毎年800万トンのプラスチックが海に流出している。

出典 国連環境計画、世界銀行

プラスチックの不適正処理に関連する疾病や事故による死者は、毎年100万人に達している。プラスチックは次第に分解され、大きさが5ミリ以下1マイクロメートル以上のマイクロプラスチックとなる。そしてこの微粒子は人間の血液、肺、母乳からも検出されている。

出典:国連環境計画

その原因の一つが合成繊維だ。カーペットやカーテンあるいはTシャツ、靴下、衣服に含まれるポリウレタンからは洗濯機を回すたびに70万以上ものマイクロファイバーが放出されている。傷んだプラスチック製品、例えば車のタイヤの摩擦や剥がれた塗料なども原因の一つだ。「マイクロプラスチックは生殖機能への影響や癌との関連が指摘されており、神経系にも悪影響を及ぼします。本当にひどい話で心配です。」と、イギリスを拠点として、フィルター技術を消費者と産業向けに開発するマター社の創業者であるアダム・ルートCEOは話している。

出典:PlanetCare

洗濯で排出されるマイクロプラスチックの問題

6kgの洗濯物を洗濯したときに放出されるマイクロファイバーの推定数(繊維の種類別)

出典: Statista

洗濯機で回収

マイクロプラスチックは合成繊維の洗濯により排出されるが、生産から使用、廃棄までのバリューチェーンのどの段階においても排出される可能性がある。洗濯機にフィルターを設置することで排出量を最大80%まで削減できることを示した研究もあり、フランスでは2025年、オーストラリアでは2030年までに、マイクロファイバー用フィルター付きの洗濯機が法律で義務付けられる。

英国の慈善団体プリンス・トラストから250ポンド(約4万円)の助成金を得て、ルート氏は、洗濯機を分解してマイクロプラスチックを回収できるフィルターを開発した。ルート氏はGEパワーやダイソンなどでエンジニアの経験を積んでおり、マイクロプラスチックの大規模回収とリサイクルを使命とするマター社を設立し、イギリスやヨーロッパにおいて大小さまざまなタイプの洗濯機に後付けできる洗濯機用の再生フィルターを提供している。さらに、パートナーシップを結んで、EU、英国、米国、中国における既存の洗濯機に後付けフィルターの設置を進めている。

マター社は今後、回収したマイクロプラスチックの活用法を模索している。「まだ完全な循環型に至っていませんが、我々の存在価値と企業理念でもある循環型を目指して計画を進めていきます。」とルート氏は語る。

出典:国連環境計画

マイクロプラスチックを濾過するフィルター事業に参入している企業は他に、米ミネソタ州のFiltrol社やスロベニアのPlanet Careがある。後者は「交換・置き換え」というシステムを採用して、マイクロファイバーを断熱材に転換させている。も事業に参入しています。 また、Guppyfriend社は後付けフィルターを買う余裕のない国内の顧客向けに、マイクロプラスチックを含む合成繊維くずの流出を防ぐ洗濯ネットを販売し、マイクロファイバー汚染対策に取り組んでいる。

産業の連携も始まっている。例えば、革新的技術グループのバルチラと海運会社のグリマルディ・グループはマイクロプラスチックの濾過技術で連携しており、船舶の排ガス浄化システムが取りこんだ海水を海に放出する前にマイクロプラスチックを回収する装置を開発している。開放型スクラバーとして知られるこのシステムは1時間当たり450㎥の海水を自動的に取り込み、海水1㎥あたり76個のマイクロプラスチックを回収できたという。

マイクロプラスチックとの闘い

  • 信州大学の研究グループは、音響収束を利用したマイクロプラスチックを濾過する装置を洗濯機や工業廃水用に開発した。このデバイスは流路中の水に超音波を照射して中央流路にマイクロプラスチックを集め、濾過させる。最終的に中央流路から両サイドの流路に流れ出た水のマイクロプラスチックはすべて除去されているという仕組だ。
  • 上海を拠点とする科学者チームは、パーム油とパーム核油を使ってマイクロプラスチックを水から分離させている。マイクロプラスチック汚染水に水と混ざらない別の液体を混ぜて固形物に変化させ、マイクロプラスチックの除去を可能にした。
  • プリンストン大学の研究グループは、卵白で安価なエアロゲルを作り、海水からマイクロプラスチックを抽出する方法を提案している。卵白を乾燥させ、酸素なしで900℃まで加熱すると、炭素繊維とハニカム構造のグラフェンのシートが結合し、海水からマイクロ粒子を99%の効率で除去することができるようになる。
  • プリマス海洋研究所の研究チームは、ムール貝を利用したユニークなプラスチック除去システムを試している。ムール貝は海水中から栄養分を濾しとって食べているため、消化器官を通して不要な粒子を洗い流している。実験では、300匹のムラサキイガイが、1時間で240個以上のマイクロプラスチック粒子を濾過し、糞に排出。水底に沈んだ糞を回収するというプランだ。
プラスチックの未来
通常のビジネスシナリオ
システム変更のシナリオ

出典:国連環境計画

磁気を活用したマイクロプラスチック除去

オーストラリアのRMIT大学化学工学部のニッキー・エシュティアギ教授が率いる研究チームは、磁性材料を活用してわずか1時間で水からマイクロプラスチックを除去できる材料を開発した。これは、数日かかる既存の方法に比べると格段の進歩だ。

「オリーブの廃棄物を高圧高温の環境に置くと水熱炭化反応が起こり、オリーブが炭化物に変わります。この炭化物には多くの活用法があり、汚染を吸着するのにも適しています」

-オーストラリアのRMIT大学化学工学部のニッキー・エシュティアギ教授

エシュティアギ教授らが開発した材料は、鉄を含むナノ材料とマイクロプラスチックを含む水を混ぜた吸着剤だ。土壌を傷めずにオリーブの廃棄物を再利用したいという発想から生まれたという。「オリーブの廃棄物を高圧高温の環境に置くと水熱炭化反応が起こり、オリーブが炭化物に変わります。この炭化物には多くの活用法があり、汚染を吸着するのにも適しています。」とエシュティアギ教授は説明してくれました。

炭化物の吸着剤はマイクロプラスチックを吸着する。鉄が含まれて磁気を帯びているため、磁性材料を通して除去が可能となる。費用対効果が高いこの方法は水中の溶存汚染物質の除去にも活用できる。汚染物質がマイクロプラスチックの表面に吸着される性質を利用するからだ。

市場は変化を促すことができるのか?

ネットゼロをめぐる脱資本主義論や気候変動を食い止めるための脱成長論が高まる中、ルート氏はスタートアップや企業が変化を促すビジネスモデルを見つけ出すことができると考えている。「実現に向けて方向転換しているところです。変化を生み出すシステムを武器にする必要があります。連携すれば、その方向に進めると信じています」とルート氏は語る。「脱成長の問題は、20億人のためにシステムを設計したために生じました。今や78億人が同じシステムを使っています。より効率的なシステムを設計してもうまく行きません。設計についての考え方を変える必要がありますし、それこそが地球を変える根本原理なのです」と説明している。

ビジネスを始めるにあたって、ルート氏には成功に対する強い執着を持っていた。「お金も後ろ盾も保証も何もありませんでした。うまくいかなければホームレスになっていたかもしれません」と振り返る。彼のサクセス・ストーリーは、2022年の会社設立当時にスカイ・オーシャン・ベンチャーズを含む支援者から50万米ドルを超える資金を調達したことに始まった。事業が成長するにつれ、資本集約度が高いため、英国政府の研究資金助成機関「イノベートUK」などからの融資や助成金も受けた。マター社はシリーズAラウンドを完了したばかりではあるが、投資家らは資本だけでなく、専門知識や顧客を確保するためのネットワークも提供してくれている。

「ほとんどの企業が商業的利益を求めて最小限のリスクで成果のある研究を望んでいます。しかし、研究開発の初期段階で生産に踏み切れない企業もあるでしょう。問題解決のために協力することが必要です」

-オーストラリアのRMIT大学化学工学部のニッキー・エシュティアギ教授

エシュティアギ教授は、学術研究がイノベーションのリスク回避を可能にすれば、企業は斬新な解決策を採用できると考える。「多くの場合は、企業は商業的利益を上げるために、最小限のリスクで成果を上げられる研究に求めています。しかし、研究開発の初期段階で生産に踏み切れない企業もあるでしょう。問題解決のために協力することが必要です。」

政府の資金援助は、企業が開発リスクを負うことをためらう初期段階の学術研究から商業化への橋渡しとなる。「オーストラリア政府は、企業が規模拡大の経費負担をしなくて済むように研究室と商業化の間を埋める資金を提供しています。これは、現在イギリスでも行われています」とエシュティアギ教授は説明する。

しかし、最終的には企業の専門知識こそが資産となる。「研究者は問題を予測することができますが、企業は物事がどのように機能するかを熟知しています」と話す。エシュティアギ教授は、化学工学や磁気分離器のスケールアップ技術を得意とする企業と連携してきた。「環境にとって差し迫った問題であることが広く認識されているため、企業の関心も高かったです。私たちの目標は、吸着剤を低価格で商業生産できる企業を見つけることです。さまざまな企業と連携して、個々の問題解決に取り組んでいくことを期待しています」とエシュティアギ教授は話す。

泡のカーテン「バブルバリア」:ケーススタディ

一杯のビールにヒントを得た友人グループが、河川からプラスチックを除去する斬新な技術を開発した。「グレート・バブル・バリアー」と名づけられた装置は泡のカーテンを作り出し、プラスチックごみを水路の隅に押しやって回収する。

この手法は決して新しいものではない。「泡のカーテン」は海底掘削時の騒音対策や、港湾での重油漏れの際に既に使用されており、プラスチックにも使える可能性を示唆していた。「用途は様々ありましたが、重油漏れに使用されているのが一つのヒントになりました。油をブロックできるのならプラスチックにも応用できるかもしれない。」オランダのアムステルダムとカトウェイクで活動する「グレート・バブルバリア」の共同設立者兼最高科学責任者であるアンヌ・マリーケ・エヴェレンス氏は話した。

毎年、沿岸諸国の河川から約800万トンのプラスチックが海に流出している。プラスチックごみを削減するために、運河の底に穴の開いた管を斜めに設置し、管から泡のカーテンを作る。これにより上向きの流れが生まれ、プラスチックが水面に浮上する。斜めに設置されることにより、運河の自然な流れがプラスチックを固定された集水システムに押し込んでいく。集められたプラスチックは、処理と再利用のために回収される。

このシステムは、河川や海洋周辺での活動や生態系への影響を最低限に抑えられるため理想的と言える。「気泡を使うので、船は通れますし、魚も回遊できます」とイヴリーンス氏は説明する。網のような装置は、往来の激しい運河には設置しにくい。

「大きな課題の一つは、運河の廃棄物に充てる予算が十分にあるわけではないということです。つまり、政府がバブルバリアを購入する余裕があるとは限りません。そこで、民間企業や市民主導のクラウドファンディングの出番です」

-「グレート・バブル・バリア」の共同設立者兼最高科学責任者、アンヌ・マリーケ・イヴレンス氏

バブルバリアは、1ミリから1メートルの大きさのプラスチックを回収することができる。これまでにも小さな発泡スチロールからクリスマスツリー、サーフボードまで、あらゆるものを回収してきた。現在、1ミリ以下のマイクロプラスチックの回収は不可能だが、それもいつか変わるだろう。エベレンス氏は「より大きなマイクロプラスチック、メソプラスチック、マクロプラスチックの除去は、その過程で起こるプラスチックによる汚染やプラスチックの劣化に既に影響を与え始めています」と話す。

オランダ政府は運河の所有者であるるため、大事なステークホルダーだ。したがってバブルカーテンのプロジェクトは多くの地方自治体の賛同を得た。「大きな課題の一つは、運河の廃棄物に充てる予算が十分ではないということです。つまり、政府にバブルバリアを購入する余裕があるとは限りません。そこで、民間企業や市民主導のクラウドファンディングの出番です。」

アムステルダムは、その歴史的な運河のひとつにバブルバリアの設置を許可した最初の都市となり、3~4年にわたる試験的な取り組みを行った。オランダの取り組みを皮切りに、ベルギー、ドイツ、イギリス、ポルトガルでバブルカーテンの取り組みが展開され始めた。「この技術は、オランダから他国へと拡大する準備が整っています。東南アジアなど他大陸への進出準備も進めており、日本でのプロジェクトにも取り掛かっています」とエヴェレンス氏は話す。

The Great Bubble Barrier Podcastはこちら

生物学とプラスチック

生物学を基にしたイノベーションが、プラスチックのリサイクルにどのような革命をもたらしているのか

消費者は、リサイクルボックスに入れたプラスチックが再生されるものと信じている。しかしアメリカを例に挙げると、その大半が埋立地に運ばれている。世界でリサイクルされているのはわずか9%だ。製品のほとんどがバージン・プラスチッククを使用して製造されており、再生プラスチックを使用しているのはわずか6%で、2014年の9.5%から減少すらしているのだ。

出典: 経済協力開発機構、グリーン・ピース

プラスチックのリサイクルが難しい理由は数えきれないほど挙げられる。例えば、リサイクルの工程が現場作業員や地域社会に有害であること、リサイクル・コストは新しいプラスチック生産よりも高いこと、プラスチックの性質からガラスや紙よりもリサイクルしにくいことなどが挙げられる。

メカニカルリサイクル(物理的再生法)で再生されても、リサイクルしにくいプラスチックは質の悪い製品になってしまう。この再生法では、プラスチックを回収、洗浄、選別、粉砕、溶解して再利用可能なペレットにする。選別の段階でプラスチックが注意深く選別されないと失敗してしまい、違う種類のプラスチックが少量でもあると品質が悪くなってしまう。

埋立地に投棄されたプラスチックは永遠に残存する。プラスチックの品質向上のために使用される添加物には内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が含まれており、人体で有害であることが知られている。また、プラスチックが砕けるとマイクロプラスチックとなり、人体の細胞を死滅させることも示されている。

スタートアップ企業や研究者らにとってプラスチックごみ問題に取り組む最も有効な方法は、商品により大きな経済的価値を与えて循環型経済への移行を加速させていくことだ。

酵素は救世主?

プラスチックの健康リスクも、プラスチックごみへの新たな対策を模索する研究者やスタートアップ企業にとって大きな動機づけとなっている。「子供が4人いるので、環境のために何かしてみようと思いました。また、スキューバダイビングを約30年続ける中で、海に残り続けるプラスチックによる海洋汚染を目の当たりにしてきました。ですからこの問題解決に取り組む会社に入ろうと思ったのです。」と、酵素でプラスチックを分解して再利用する技術のパイオニアであるフランスのバイオテクノロジー企業、カルビオスの最高経営責任者(CEO)エマニュエル・ラデント氏は話す。

「スキューバダイビングを約30年続ける中で、海に残り続けるプラスチックによる海洋汚染を目の当たりにしてきた。ですからこの問題解決に取り組む会社に入ろうと思ったのです」

-カルビオスの最高経営責任者エマニュエル・ラデント氏

従来の技術で再生されたプラスチックはバージンプラスチックよりも品質が劣化することは避けられないが、カルビオス(2011年創立)は再生材料の品質を向上させる新たな技術を提供している。「弊社のバイオリサイクル技術を使えば、廃棄物が100%リサイクル可能となり、再生を10回、20回と繰り返してもバージン・ポリエチレンテレフタレート(PET)のような品質を保つことができます。プラスチックを分解する酵素を最適化すると分子の“はさみ”のような働きをするのです」とラデント氏は説明する。

機械的な方法とは異なり、酵素はプラスチックを分解してPETの構成要素である高純度テレフタル酸とモノエチレングリコールに戻す。これによりリサイクル製品はバージンプラスチックと同じ品質になりますあらゆる種類のPETの廃棄物を60~70℃の温度でリサイクルでき、溶剤も不要となる。

出典:Packaging World

F菌類という「味方」

生物学に基づいたプラスチック再生に取り組む研究グループは他にもある。カンザス大学のベル・オークリー教授は、菌を利用した廃プラスチック再生に取り組んでいる。「菌類を利用して、酵素のほか抗生物質やスタチンといった薬剤など多くの価値あるものが生み出されています。菌類を利用した製品の市場規模は年間数十億ドルにのぼる巨大産業となっています。プラスチック業界にはおそらく、経済的に実行可能で大規模かつ問題解決につながる何かが必要なのです」とオークリー教授は語る。

「菌類を利用して、酵素のほか抗生物質やスタチンといった薬剤など多くの価値あるものが生み出されています。。菌類を利用した製品の市場規模は年間数十億ドルにのぼる巨大産業となっています」

-カンザス大学ベル・オークリー教授

プラスチックの化学結合を最初に分解し、その後に遺伝子組み換えのアスペルギルス属の真菌を使って消化させるという概念実証のアプローチを用いて、研究チームは薬理活性化合物を製造した。真菌の研究によって、太平洋を浮遊する「リサイクルが困難なプラスチックごみ」をアスペルベンゾアルデヒドのような成分に変換することに成功した。この成分は神経変性疾患のタウ凝集を抑制することが示されている。同チームはまた、抗ウィルス性、抗真菌性、抗菌性で知られるシトレオビリジンや、抗菌性を持つムチリンも生み出すことにも成功した。

この研究はまだ緒に就いたばかりだが、菌類がプラスチックを分解してできた生成物を酵素の生産に利用できるとオークリー教授は考えている。「プラスチック除去には数グラムではなく100万トンの何かを作る必要があるでしょう。しかし私たちは年間100万トンのプロテアーゼを生産する会社を設立するのではなく、あらゆることができる菌のレパートリーを増やすことに主眼を置いてきました」とオークリー教授はタンパク質の結合を切断できる酵素を作り出す潜在的な能力について説明している。

オークリー教授は、規模の大きさに関わらず、菌がプラスチック汚染に変化をもたらすと確信している。「プラスチックを分解してできた生成物を、菌が作用する発酵の過程に加えると、問題解決とはいきませんが、少しは前進となるでしょう。やってみる価値はあります」と話す。

産業を変革するためには

包装資材、小売、プラスチック業界への消費者の圧力の高まりを受け、ロレアル、ネスレ、ウォーターズ、ペプシ、パタゴニア、カルバン・、クライン、トミー・ヒルフィガーなどのブランド企業などが、カビオスの技術からできた再生プラスチックに関心を寄せ、投資も行っているとラデント氏は話す。「この技術の採用に熱心な業界はかなり多いです。化粧品や食品・飲料業界は、カルビオスの再生PETの品質に魅力を感じており、繊維メーカーは循環型社会を実現するチャンスだと考えています」

出典:BloombergNEF、企業の報告書  注:2021年(または最新)のサステナビリティ報告書からのデータ。

経済情勢が厳しいうえ規制の圧力もあるため、企業による最新技術への要求は高まっている。「ヨーロッパ諸国は包装に再生材料を使用する率を、2025年までに25%、2030年までに30%、そしておそらく2040年までに65%まで上げていくでしょう」とラデント氏は話す。この規制は、アメリカのいくつか州や東南アジアの国々でも敷かれていて、企業にとってはプレッシャーとなっている。

国はプラスチックごみの回収にもっと力を入れて、焼却を回避させる必要がある。「回収を進めて、リサイクル技術にもっと原材料を供給できるように組織化する必要があります」とラデント氏は警告する。「汚染の原因のひとつは、海に流出した廃棄物に全く価値がないということです。廃棄物に少しでも価値を与えれば、プラスチックごみが海に流出する可能性も低くなるでしょう」と話す。

「ヨーロッパ諸国は包装に再生材料を使用する率を、2025年までに25%、2030年までに30%、そしておそらく2040年までに65%と上げていくでしょう」

– カルビオスの最高経営責任者(CEO)エマニュエル・ラデント氏

技術だけではでプラスチック問題の危機的状況を解決に導くことはできない。真に持続可能なプラスチックの利用を実現するためには、世界的なプラスチック条約と各国の法整備が不可欠だ。しかし、汚染の規模を鑑みると、陸と海で既に循環している膨大な量のプラスチックを回収、再利用する技術革新が不可欠であることは明白だ。

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