プラスチック汚染問題は最も差し迫った環境問題の一つと言える。その危機の規模は、毎年1,400万トンのプラスチックが海洋に流出し、海洋生態系と人間の健康に影響を与えており、緊急の対応が必要となっている。
エコノミスト・インパクトは日本財団とミンデロー財団の支援を受け、海洋環境保全イニシアティブ「Back to Blue」との共催で、昨年10月11日〜12日にバンコクでグローバル・プラスチック・サミットを開催した。これは、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約の素案(ゼロドラフト)が発表された数週間後に開催され、しかも11月にはケニアで条約交渉担当者の重要な会合が開催されることになっていたため、政府、科学界、非政府組織(NGO)、民間部門の関係者が素案について議論する重要な場となった。
2日間で開催されたプラスチック・サミットでは、マルチステークホルダー・ワーキング・グループが行われ、メキシコ外務省からカミラ・ゼペダ氏、チリ外務省ゴンサロ・グアイキル氏、条約策定に向けた政府間交渉委員会共同議長のルイス・ヴァヤス・バルディヴィエソ氏らが出席して、提言を作成した。小島嶼開発途上国から(SIDS)からは、パラオのセンゲバウ・シニョール副大統領とフィジーのガボカ副首相が参加した。
サミット参加者は、科学と政策間の強力なインターフェース構築が急務であることに賛同しているが、それは、低所得国、特にSIDSの条約交渉担当者らが科学的および技術的サポートを受けやすくなり、条約交渉に有意義な形で参加できるようになるからだ。ピーター・トムソン国連海洋特使は、「島嶼国は、プラスチックの生産や消費の削減ができず、プラスチック廃棄物の適切な管理もできない、世界の無能力の結果に苦しめられている」と述べた。
モントレーベイ水族館の最高保全・ 科学研究責任者であるマーガレット・スプリング氏は、科学者と交渉担当者間の溝を埋めるために「何が必要か伝えてくれれば支援を厭わない」と述べ、需要主導型アプローチを提案した。
国連環境機関は、2024年末までに条約策定を目指すという野心的スケジュールを設定している。交渉の中間点で、グローバル・プラスチック・サミットの参加者のほとんどがこのプロセスについて慎重な楽観論を表明していた。
「ゼロドラフト」は、幅広い選択肢を提供し、交渉担当者に確固たる基盤を与えて作業を開始できるようにしていると グアイキル氏は述べた。
しかし、一部の参加者、特に科学者やNGOの代表者は、ゼロドラフトにおける明確な定義と詳細が欠如していることが野心的な条約実現の阻害要因となり得るとの懸念を示した。国際NGOのEnvironmental Investigation Agencyの海洋キャンペーン・リーダーであるクリスティーナ・ディクソン氏は、どの定義と目標を2024年末までに決定しなければならないか、また、どれを後回しにできるのかについて、今後の交渉委員会で合意していくことが肝要だと述べている。
サミット参加者らは条約交渉に、グローバル・サウス、非政府組織、コミュニティ・グループなどから様々な声を採り入れる必要があるという認識で一致した。交渉に幅広い参加者を巻き込むで、最終的な条約は、ウェイストピッカーと呼ばれる何百万もの人々を含む社会から疎外されたグループにとって公平かつ公正な結果をもたらすことになるだろう。「公正な移行とは、プラスチックが生み出す問題と利益を地域社会が平等に分かち合わなければならないということだ。」と、若者によるアドボカシー活動Green Africa Youth Organizationのカントリー・マネジャー、ベティ・オセイ・ボンス氏は話す。
Back to Blueが現地で実施した調査によると、参加者のうち60%がプラスチック生産と廃棄物について国や企業に責任を負わせる法的拘束力のある条約を望んでおり、41%が政策措置を支援する実質的かつ長期的な資金調達が最優先事項であるべきだと考えている。
条約実現に向けてやるべきことはまだたくさん残されている。交渉担当者は早急に、条約の主な定義、原則、適用範囲について合意しなければならない、2024年末までに条約策定を実現させるには、正式な交渉の合間に野心的な作業プログラムが必要だ。本格的な作業はこれから始まる。
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