『海に忍び寄る新たな危機:有害化学物質による海洋汚染と克服に向けたビジョン・方策』は、エコノミスト・インパクトと日本財団による海洋環境保全イニシアティブ『Back to Blue』の一環としてエコノミスト・インパクトが作成した報告書だ。本報告書の主な目的は、海洋化学汚染に関するステークホルダー(政策担当者・政府関係者・化学セクター・経済界・金融セクター・ 市民社会・消費者)の認知を高めることにある。
世界が苦戦する中で、アジアの海洋科学汚染への取り組みがいかにして奏功したか。史実、現時点での推測、現実科学に基づいた2045年のシナリオ。
エコノミスト・インパクトと日本財団の共同イニシアティブ Back to Blueの一環としてエコノミスト・インパクトが執筆した本報告書は、海洋化学汚染の問題を、政策立案者、政府、化学産業界、経済界、金融界、市民社会、消費者などの幅広いオーディエンスに理解してもらうことを目的としている。
陸上・大気・河川・排水路などで見られる 化学物質汚染は、過去数十年で悪化の一途を 辿っている。これまでも度々対策が講じられて きたが、その深刻さが明らかとなったのはつい 最近のことだ。栄養素・重金属・残留性有機 汚 染 物 質[Persistent Organic Pollutants = POPs]・排水などに含まれる化学物質は、様々 な形で環境へ流出し、土壌・帯水層・食物連鎖、 あるいは南極・高地・低地をはじめとする極地 帯など、地球上のありとあらゆる場所で検出 されている。近年は自然環境・人体への害を 示す多くのエビデンスが明らかとなっており、 この問題が気候変動・生物多様性の損失と並ぶ (あるいは両者との相互作用により)深刻な脅威 になるという認識が広まりつつあるのだ。
地表面積の 70%、居住可能空間の 99%を 占める 1 海洋環境は、あらゆる生命体にとって 極めて重要な存在だ。しかし化学物質汚染の 規模や、海洋環境(海洋生物・生物多様性・生 態系機能など)への影響については、十分な 科学的検証が行われていない。本報告書では、 現時点で明らかな影響、そしてさらなる研究が 急務となる領域を明らかにしてゆく。
本章では、海洋化学汚染において最も懸念される主な化学物質および化学物質群を概説し、それぞれの既知の原因と影響に注目する。
本章では、化学物質のライフサイクルを通して化学汚染に対する責任の明確化を図る。化学物質のライフサイクルとは、工業用化学物資を製造する過程で使用される化石燃料、鉱物、金属の採掘といった製造の前段階のから、化学物質の利活用、そして使用後の廃棄プロセスを管理する公共及び民間事業者に至るまでである。
海洋化学汚染の中には、人間活動とは無関係なものもあるが(例えば、一部の重金属の自然排出、一部の窒素や放射性物質の排出、海底火山からの鉱物やガスの大量放出など)、ここ数十年の急激な汚染の増加は人間によるものである。つまり、人為的ということで、そのほとんどは過去100年ほどのに発生したものである。本章では、このような広義での海洋化学汚染を取り上げ、なぜ対策が急務となったのか、そしてなぜ対策が海洋環境と地球そのものに極めて重要であるかを説明する。
本章ではエビデンスを示していく。海洋化学汚染が海洋環境と人間の健康に与える影響について、確立できる範囲でのエビデンスを提示する。これらの損失のベースラインを決定することは急務であるが、エビデンス提示により推奨される一連の介入策や行動を推定される将来の利益に従ってモデル化することが可能となる。本章の締めくくりは、海洋化学汚染がメキシコ湾の漁業に与えた影響に関する詳細な事例研究とする。
本章では、海洋化学汚染の削減や解決策として汚染防止規制や政策ソリューションについて考察する。そのために、国際的、超国家的、国内的規制の主な側面を概説し、EUが世界のリーダーになっている理由を含め現状を説明する。更に、進展を阻む障壁を挙げながら、規制・政策面に必要となる重要な介入策を詳述する。
本章では、海洋化学汚染における化学産業の役割に注目し、化学業界と顧客が講じるべき対策の評価を行い、行動しない場合に直面するリスクを検証する。また、グリーンケミストリーを含めた前進の道筋を検討したうえで変化を阻む障壁を評価する。その結論として、業界主導の行動のためのロードマップを提示する。
本章では、金融が海洋化学汚染への取り組みに果たしうる役割を考察する。特に、ESGの検討事項の重要性が高まり、ESG要素がグリーンからブルーへと移行していることを踏まえたうえで、金融機関やその顧客が講じるべき対策の評価を行う。また、投資家の意思決定に役立つより良い情報とデータの必要性や、転換期の化学産業のリスクとリワードを検証し、その転換への資金提供の可能性を評価する。
本章は、海洋化学汚染削減において市民社会と消費者の役割について考察する。この問題に対する一般の意識は比較的低いものの、過去における市民グループの成功例は前進の道を示しているといえる。無関心に対しては科学に基づく視覚的なストーリーテリングを活用し、同時に、日常生活で実践できる現実的で達成可能なソリューションを提示していく。
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