幅広い専門家から成るステークホルダーによる協議を経て作成された報告書は、海洋汚染データのギャップ解消に効果的かつ実行可能なロードマップ策定に向けて取り組むべき重要な問題点の検討を行っている。

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要点

• Back to Blueのこれまでの報告書は、海洋化学汚染が過小評価されている点と、この問題に関するデータが不足している点を指摘してきた。本報告書は、海洋汚染データギャップ解消に向けた実用的かつ実行可能なロードマップ策定に向けて取り組むべき重要な問題を明らかにする。
• Back to Blueがロードマップ策定を目指す目的は、海洋環境への汚染の影響を理解したうえでその影響を軽減し、更には、行動を喚起するためのエビデンスを提供することにある。その効果を上げるためには、科学的根拠に基づくプロセスでなければならない。
• ロードマップは海洋汚染の理解を深めるために、陸・大気・淡水汚染に関する既存のデータや知識の活用方法を検討すべきである。また、ロードマップは海洋データのグローバルで連結したデジタル・アーキテクチャ構築のための既存の取組と相互運用をすべきである。
• 人工知能(AI)などのデジタル・ソリューションや自律型水中航行体などの物理的技術は、知識差の解消に強力なツールとなるだろう。ロードマップにとって重要な問題は、汚染データを既存の海洋データベースに統合させ、海洋汚染データ・システムをテクノロジー・ソリューションと連動させるにはどのような方法が最適かということである。
• Back to Blueの「変革の理論」は、高品質で標準化されたデータであれば、政府・企業・民社会の意思決定者に、海洋汚染への対応策の必要性を示す説得力のある証拠を提供できるというものである。その結果、より良い政策決定やビジネスの変革支援へと導かれることになる。
• Back to Blueはこれらの問題の答えを求めて、2023年はステークホルダを集めたワークショップをシリーズで開催した。2024年初頭には海洋汚染データ・ギャップの解消に関するロードマップ草案を発表することを目指している。海洋関連のステークホルダーにこのプロセスへの参加を呼び掛ける。

報告書について

この報告書は、報告書『海に忍び寄る新たな危機:有害化学物質による海洋汚染と克服に向けたビジョン・方策』と報告書『海洋汚染ゼロの実現:科学的エビデンスのさらなる蓄積に向けて』のために実施された調査に基づいている。 読者は、このテーマの入門書としてこれらの報告書を参照されたい。

また、この報告書は、主に『海洋汚染ゼロの実現』におけるステークホルダーのインタビュー、会議、提出物に基づくものであるが、これらは2023年1月から4月にかけて実施・収集されたものである。Back to Blueは、ウェブサイトを通じて投稿や回答を寄せてくださった個人や団体に深く感謝している。この2年間、時間や知見を共有してくださった多くの方々にも感謝の意を表したい。こうした議論は、本報告書のみならずBack to Blueイニシアティブをより広く周知していくうえでも極めて重要であった。

特に、インタビューにご協力くださった方々、そして、この報告書のテーマ別フレームワークの草稿にご意見を寄せてくださった方々にも感謝したい:

  • Pierre Bahurel,
    メカトール・オーシャン, チーフエグゼクティブ
  • Philippe Bersuder
    国際原子力機関(IAEA)海洋環境研究室室長
  • Sally De Marcellus,
    OECD, 電子情報アナリスト
  • Florence Descroix-Comanducci,
    国際原子力機関(IAEA)
    IAEA海洋環境研究所所長
  • Bob Diderich
    OECD 環境局局長
  • Jana Friedrich,
    国際原子力機関(IAEA)海洋環境研究所放射線生態課長
  • Nathalie Girouard
    OECD 環境パフォーマンス・指標部部長
  • Joanna Grudzińska
    テック・トゥ・ザ・レスキュー
    危機対応コーディネーター
  • Ivan Haščič
    OECD シニアエコノミスト
  • Peter Kershaw
    国連の海洋環境保護の科学的側面に関する合同専門家会合(GESAMP)のメンバー
  • Linet Kwamboka
    持続可能な開発データのためのグローバル・パートナーシップ(GPSDD)のコンサルタント
  • Kenneth Leung
    香港城市大学 環境毒物学・化学主任教授
  • Jyoti Mathur-Filipp
    国連環境計画(UNEP)
    プラスチック汚染INC事務局 事務局長
  • Kakuko Nagatani-Yoshida
    国連環境計画(UNEP)
    化学物質・汚染サブプログラム世界コーディネーター
  • Prasad Pant
    ZDHC財団
    南アジア・ディレクター兼コンピテンスセンター・ディレクター
  • Peter Pissierssens
    ユネスコ政府間海洋委員会(IOC)
    IODEプロジェクト室長兼IOC CDコーディネーター
  • Pierre Quiblier
    国連環境計画(UNEP)
    プログラムオフィサー兼SAICM事務局員
  • Lucy Scott,
    Ocean InfoHub プロジェクトマネージャー
  • Jacek Siadkowski
    テック・トゥ・ザ・レスキュー
    共同設立者兼最高経営責任者
  • Anna Silyakova
    HubOcean サイエンス・リード
  • Graeme Sommerville-Ryan
    EyeSea 創設者
  • Marius Suteu
    EyeSea 最高技術責任者
  • Hanqiang Tan
    国際海事機関(IMO)
    海洋環境保護委員会(MPEC)副委員長
  • Koki Takaki
    経済協力開発機構(OECD)
    暴露評価および汚染物質排出・移動登録(PRTR)管理者
  • David Vousden
    国連海洋環境保護の科学的側面に関する合同専門家会合(GESAMP) 議長
  • Anya Waite
    全球海洋観測システム(GOOS)共同議長
  • Amelia Wenger
    クイーンズランド大学シニアリサーチフェロー野生生物保護協会(WCS)自然保護科学者

Back to Blue アドバイザリーボード

  • アン・ディエルクス
    欧州化学工業連盟(CEFIC)サステナビリティ担当ディレクター
  • 石井菜穂子
    東京⼤学 グローバル・コモンズ・センターディレクター
  • パスカル・ラミー
    パリ平和フォーラム 委員長
  • キラパルティ・ラマクリシュナ
    ウッズホール海洋研究所
    海洋・気候政策担当上級顧問
  • ウラジミール・リャビーニン
    ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)事務局長
  • エルシー・サンダーランド
    ハーバード大学 環境科学・工学部教授

いかなる誤りや脱落も私たちの責任である

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