ロードマップの策定に向けて

深刻な影響をもたらす海洋汚染の全体像は、依然として明らかになっていない。汚染・気候変動・自然環境の損失という“三つの地球的危機” は、広く知られている。しかし海洋汚染の現状、そして汚染が生態系・経済・人体の健康にもたらす累積的影響を、世界規模かつ包括的に評価する取り組みは行われていない。

海洋汚染にまつわる課題は、認知度の高いプラスチックの問題だけではない。肥料・廃水に含まれる栄養素(デッドゾーンの原因となる)、自然界では分解されず環境中に滞留する「永遠の化合物」ことで知られるPFASなども深刻な要因だ。

海洋汚染は、豪雨による雨水流出や廃水管理の不備、工業活動といった陸上の活動に端を発し、汚染物質は河川や水脈を通じて海洋環境へ流出する。船舶・エネルギーといった洋上産業も汚染源の一つだ。こうした多様な背景が、問題の克服を複雑化させている。

Economist Impact と日本財団による海洋環境保全イニシアティブ『Back to Blue』は過去3年にわたり、科学・産業・政策・金融コミュニティのステークホルダー、国連関連機関専門家との知見共有や対策作りに向けた連携を行ってきた。

2024 年3 月に発表された『世界規模の海洋汚染克服に向けて:行動推進のロードマップ』(以下、ロードマップ)は、こうした取り組みの成果だ。

同報告書では、多様なステークホルダーによる世界規模の協働と海洋汚染の影響・規模に関する包括的エビデンスの確立、そして具体的対策の推進に向けた戦略的枠組みを提示している。

『Back to Blue』は、海洋汚染に関する認知度・理解を大きく前進させるという野心的目標を掲げ、連携を通じた世界規模の対策実現・推進の取り組みを進めてきた。

本報告書では、ロードマップで行った主要な提案とその背景について概要を紹介する。

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